スキマスク開発話


初診の時の患者さんの言葉、

「この前歯の見た目が気になって治したいんです」

 

相談を受け、拝見させていただくと

「もう少しここに歯肉があったら。。」「根が出てるから長くなる。。」

「一生懸命磨いてくださった結果、歯肉が退縮してるな。。」

「前歯の見えている長さが違う」と

どうしても歯肉のバランスの崩れが見た目の足を引っ張り

美しさの足枷になることが本当に多いです。

 

古い差し歯を作り変えても結局は歯が大きくなるだけだったり

美しい波状のスキャロップラインが崩れてしまっていたり

治療直後は美しかった前歯が数年後、歯肉痩せによって不自然に見えてくる

 

このような状態を常に「どうしたらいいのだろう」と思いつつ、

患者さんからも同じところを相談され

見た目に影響する場所なのに、「難しいです」「仕方がありません」

「他に方法はありません」と答えるしかありませんでした。

他の病院でも同じこと言われました。。と。

色々な方法を調べたとしても、手術等

患者さんが受け入れるにはハードルの高そうなものだけ。

しかもその後も保持するのが難しく、元に戻ることも多いのです。

決して悪い方法ではありませんが、果たして患者さんが望む状態とは

どの様なものなのだろう。。と考えました。

 

歯の上に歯ぐきが薄く乗る

 

この自然な状態を回復することは本当に難しいのです。

 

そこで、数年前「思い切ってカバーしてしまう方法はないのかしら」と考えました。当初は入れ歯で抵抗がある方が多いのに、カバーする目的とはいえ

口に義歯状態のモノを入れるのは

受け入れてもらえないかもしれないと思いましたが、

まずは自分で装着してから考えよう!と試作品を作ってみました。

 

自分だったらどういうものが欲しいのか?という条件を考え

〇見た目の回復、できるだけ欠点を隠せるもの

〇過程に痛みを極力伴わない事

〇嫌なら元に戻せること

〇自分の意志でつかう事が出来るもの

〇制限が少なく日常生活を送れるもの

〇過去に自費で入れた前歯を外すのは抵抗があるであろうから

必要がなければ外さずに装着できるもの

 

頭の中で思い描いていたイメージをそのまま製作したところ、

意外とすぐに形は思いつき、ぴったりフィットし、

数時間たつと違和感に慣れてきました。

見た目も衛生士さんに見てもらっても自然で近づいてもわからないとのこと。

 

本気で悩んでいたとしたらこの感覚なら受け入れてもらえるかもしれない

 

それからは歯ぐきの隙間をどのように再現すればいいのか微妙な試行錯誤の繰り返し

違和感をもっと無くすには?大きさの最小限は?

装着したことのメリット等を色々考え、最終的なデザインにたどり着きました。

 

意匠登録の為には他言することができなかったので

開発から登録されるまでの間はじっくりと経過をみることができました

 

やっと登録され、公表できるようになったときには

感想や意見を広く聞く必要があったので患者さんへ声をかけさせていただくと

皆さん二つ返事で「良いですよ!そういうの探していました!」と

快くモニターさんになってくださいました。

 

前歯を全部いつかはやり直さないといけないと思っていた方。

歯肉の痩せは仕方がないので見た目は諦めていた方。

他の人の口元を見て気になって、自分の口元も気にされていた方。

 

質問すると多くの人が多かれ少なかれ歯ぐきとの不調和に悩んでいました。

 

それをどのように歯科医に伝えていいのかわからなかった、または

理由はわからないけれど、自然に見えない。と

歯科医側からの指摘により初めて自覚された方も多くいらっしゃいました

 

自分のスキマスクである程度手ごたえは感じていましたが

やはりモニターさんの口の中は全員違います。

スキマスクを作っても、適応の方が少なければ魅力半減です。

自分なりにハードルを上げながら、難しそうな方に声をかけて装着する度

最初は何だか、何をされるのかよくわからないという感じの患者さんが

鏡を見た瞬間

 

「うわ~。綺麗~!」

「悩んでいる人は沢山います。是非もっと頑張ってください」と言ってくださり

より広く同じ悩みを抱えている人に知っていただけたらと公表に踏み切りました。

 

時代は歯や歯並びの美しさだけでなく歯肉との調和も必要としています

より美しく。より自然に。

 

日本で口腔衛生意識が高まり、このスキマスクが不要になる時代が来るまで

お手伝いできたら幸いです。